2017年4月9日(日)
[ 活動報告 ]
化学兵器の使用は誰によるものであれ、人道と国際法に反する許されない行為で
す。しかし一方的なシリア攻撃は、米国自身の国連での主張にも反します。
米国はミサイル攻撃の前、英仏とともに国連安保理に提示した決議案の中で、シリ
アでの化学兵器使用の責任者の特定と処罰を求め、化学兵器禁止機関(OPCW)と国連
による、軍事施設を含むシリアでの化学兵器攻撃の調査を提起し、同国への軍事制裁に
は言及していませんでした。シリアは化学兵器禁止条約の加盟国であり、OPCWの調
査が適切です。軍事攻撃はそれを妨げるものです。
トランプ大統領は攻撃について、「化学兵器の拡散と使用を防ぎ、抑止することは、
米国の国家安全保障上の死活的な利益」と正当化を図っています。ここには、シリアの
人々がおかれた苦境の打開とは無縁の、国連憲章や国際法を無視した「米国第一」主義
の危険が現れています。
国連のグテレス事務総長は7日の声明で、シリア情勢の深刻化に懸念を示し、内戦に
は政治解決しか道はないと強調、すべての当事者の取り組みが急務だと呼びかけました。
安保理の同日の討論でも、ミサイル攻撃を支持する英仏の一方で、攻撃への批判と紛争
激化への警告や、シリア内戦終結のため米国とロシアに率直な話し合いと協力を求める
意見(エジプト)が相次ぎました。内戦の解決は「テロとのたたかいの前進にも不可
欠」(グテレス氏)です。
ところが安倍晋三首相は、いち早くトランプ政権の「決意を支持する」と表明しまし
た。米国追従の極みで、内戦悪化をもたらす側に日本政府を立たせるものです。
重大なのは、「東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻」と北朝鮮の核・ミサイル開
発を念頭に、トランプ政権の行動を高く評価したことです。自民党幹部からも「北朝鮮
にかなり強いメッセージになった」「一定の抑制効果になればいい」と歓迎の声が聞こ
えます。
しかし北朝鮮問題での軍事解決は、シリア内戦についてと同様、ありえません。米ト
ランプ政権は、「すべての選択肢がテーブルにある」と、北朝鮮への軍事力の行使も辞
さない態度を見せていますが、北朝鮮は「われわれは断固たる先制攻撃で徹底的に粉砕
する合法的な権利がある」と反発しています。軍事対軍事のエスカレートにより朝鮮半
島で紛争が起きれば、おびただしい犠牲が出ることは避けられません。
安倍政権は、地域と世界に深刻な事態をもたらす軍事攻撃を米国に促すような態度は
やめるべきです。北朝鮮には、国際社会の結束した経済制裁の実施と、外交交渉で核・
ミサイル開発の放棄を迫ることが重要であり、日本は、そうした方向に進むよう米国に
働きかけることこそ必要です。